おもちの人生色々

自身で経験した事が、誰かのお役に立てたらと思います。可愛い愛猫も登場します。

造血幹細胞移植をしないと1歳まで生きられない

息子の前では笑顔でいる事。
悲しい辛い涙は流さないと心に決めた。

15年前‥
原発性免疫不全症候群 X連鎖重症複合免疫不全症と診断された当時生後8ヵ月の次男末っ子。
約10万人に1人 男の子が発症する遺伝による難病。
X連鎖の遺伝形式の疾患では、母親が保因者の場合、生まれてくる男児は2分の1の確率で発症し、女児は2分の1の確率で保因者となります。

🔴原発性免疫不全症候群
<X連鎖重症複合免疫不全症>

通常生後数か月以内に日和見感染を含む様々な重症感染症を発症し、根治的治療である造血幹細胞移植を行わなければ生後1年以内に死亡。
T細胞がまったく存在しないため、B細胞は免疫グロブリンを産生できず、免疫グロブリンがわずかしかありません。

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T細胞
リンパ球の一種で,骨髄の幹細胞に由来し,胸腺で分化する免疫担当細胞。同じ骨髄幹細胞由来のB細胞と形態的に酷似する。機能をもとに4種類に分類でき,B細胞の抗体産生細胞への分化を助けるヘルパーT細胞,抑制するサプレッサーT細胞,アレルギー反応を誘発するエフェクターT細胞,標的細胞を破壊するキラーT細胞が存在する。T細胞はB細胞と違い抗体をつくらないが,抗体産生を間接的に調節する役割を担い,また,細胞性免疫の主役となっている。

B細胞
リンパ球の中でT細胞とともに免疫機能に深く関わり、T細胞と異なって胸腺に依存せず成熟します。B細胞は特定の一種類だけの抗体を生産して、この抗体と同じ性質を持つ分子を細胞表面にある受容体として備えています。この受容体が抗原に刺激されると、増殖して各種の免疫グロブリンを作りだし、外敵である抗原に対抗します。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)
リンパ球の一種。全身の細胞をくまなく監視し、悪性変化して癌(がん)化した細胞やウイルスの侵入を察知し、ウイルスだけでなく感染した細胞ごと殺そうと働く。T細胞のように体内にある特定の抗原をそれと認識して反応するのではなく、ウイルスに感染した細胞をみつけだして殺す殺し屋(キラー)であるため、この名がついた。
リンパ球のなかで先天免疫を担っている。癌細胞やウイルスに感染し発現量が低下している細胞をみつけだして融解する。これによって正常細胞を傷つけずに免疫機能を果たす。

免疫グロブリン
免疫の中で大きな役割を担っているのが免疫グロブリンで、血液中や組織液中に存在しています。
免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、それぞれの分子量、働く場所、時期にも違いがあります。これら5種類の免疫グロブリンの基本的な形はY字型をしています。

IgG
血液中に最も多く含まれる免疫グロブリンです。分子量は約16万ダルトン、健常成人では血漿中に約1,200mg/dL含まれ、種々の抗原(細菌、ウイルスなど)に対する抗体を含んでいます。
IgA
人の腸管、気道などの粘膜や初乳に多くあり、局所で細菌やウイルス感染の予防に役立っています。IgAは血液中ではY字型をしていますが、粘膜や初乳中ではY字構造が2つ結合した形をしています。
IgM
私たちが細菌やウイルスに感染したとき、最初に作られる抗体です。そしてIgMが作られた後に、本格的にIgGが作られます。このため、血中のIgMを調べる事で今どんな感染症にかかっているかがわかります。IgMは5つのY字構造が互いに結合していて、Y字構造一つで出来ているIgGより効果的に病原体に結合すると考えられています。
IgD
Y字型をしていますが、量的にも少なく、その役割はよくわかっていません。
IgE
免疫グロブリンとしては最も量が少なく、喘息〔ぜんそく〕や花粉症などのアレルギーを起こす抗体です。

日和見感染
健康な方では問題とならないような病原体に感染することにより発症する感染症のことを指します。免疫力が低下した方が日和見感染で問題になる病原体は、細菌、ウイルス、真菌など多岐に渡ります。 発症すると、体の各臓器において感染症状が出現します。
その他、糖尿病や、白血病などの悪性 疾患(がん)なども日和見感染を起こす原因となりえます。

症状
日和見感染症を起こすと、体の各種臓器において感染症状が出現し口腔内から食道にかけてカンジダが発生、口の中に白い物質が付着したり食べ物を飲み込む際などに痛みを感じたりすることがあります。
肺炎を発症した場合には、咳や痰、息苦しさなどが出現し消化器系に感染を起こした場合には、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などの症状がみられます。なかには、口腔内や皮膚に水ぶくれや潰瘍をきたす病原体もあります。
網膜や脳などが障害を受けることもあり、この場合、視野や視力に障害が生じたり、頭痛やけいれん意識状態の低下などの症状につながったりすることも。
さまざまな臓器に多様な症状をみることがある日和見感染ですが、根本的な免疫障害が改善されないと感染症を繰り返すことも特徴です。感染症をきたすたびに臓器障害が進行し、徐々に臓器の予備能が低下することもあります。


★生後 3ヵ月頃から頻繁に38度前後の熱を出し、ミルクを飲んでは吐く。
口の中に白いカビが埋め尽くされていた。
予防接種の日に限り熱が出て接触不可。
生後3ヵ月ツベルクリン(生ワクチン)
生後6ヵ月ポリオ( 〃 )

通常様々な日和見感染をおこしますが、
感染が軽度。
『もしかしたら免疫不全かもしれない』気づいてくれたのは、70歳を過ぎた小児科の石川先生。
先生に出会わなければ…
息子は1歳まで生きられなかった。

紹介状を書いていただき大学病院へ
検査をした数日後、主治医の先生から
『骨盤移植をしないといけないかも知れません……』
穏やかな口調で説明してくれるものの、頭の中が真っ白。
『骨盤移植』の言葉が脳裏から離れず体が震え涙が止まらなかった。


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○治療方法
一般的に骨髄移植、臍帯血移植などの造血幹細胞移植では移植前処置といって抗癌剤放射線で患者の骨髄を破壊する処置を行なってから造血幹細胞を移植をします。

骨髄移植
骨髄にある造血幹細胞を採取して移植する方法です。通常、骨髄液は腸骨(ちょうこつ)という骨盤の骨から採取されます。

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末梢血幹細胞移植
血液中にある造血幹細胞を採取して移植する方法です。通常、造血幹細胞は血液中にはいないため、白血球をふやす薬であるG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を投与したあと、骨髄から血液中に流れ出した造血幹細胞を「血球成分分離装置」を使って採取します。

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臍帯血移植
胎児と母親を結ぶ臍帯と胎盤に含まれる胎児由来の血液(臍帯血)に造血幹細胞が豊富に含まれています。臍帯血の提供に同意した妊産婦がドナーとなり、分娩後に臍帯血を採取し、臍帯血中に含まれる造血幹細胞を移植する方法です。

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ドナーから採取した骨髄液や末梢血はパックに保存され、点滴で患者さんに移植されます。
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★平成15年12月15日
無菌室での入院生活が始まりました。
24時間付き添い。
口の中のカビ(鵞口瘡)以外は特に問題がなく元気。
薬処方
ファンギゾンシロップ
フローリードゲル

無菌室(クリーンルーム)
特別な空調設備(高性能フィルター)を使用して、きれいな空気を循環させているお部屋です。
化学療法や抗癌剤を使用するため、白血球が極度に減少することにより、感染が起こりやすい状態となります。
そのため外界からの感染を予防する設備が整ったクリーンルームで治療を行ないます。
患者さん以外の入室の際は術衣等を着ます。

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★中々HLA型の適合するドナーが見つからない。

HLA
白血球をはじめとする全身の細胞にはヒト白血球抗原(HLA:Human Leucocyte Antigen)と言われる型があり、移植には患者さんとドナーさんのHLA型の一致する割合が関係してきます。


★入院生活も2週間がたった頃、
HLA型が100%一致…
見つかりました。
北海道赤十字に保存されている臍帯血です。
次男末っ子と全く同じHLA型…
奇跡です。

私の住んでる街では設備が整っていない為、造血幹細胞移植が可能な病院がありません。
先生が一押しする病院への受け入れ許可が決まりました。

平成16年1月ドクターヘリにて転院
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★移植に向けて…
無菌室では次男末っ子を抱っこ出来るまでに、7回程の消毒が必要。
オモチャや衣類、オムツなど全て滅菌。
食欲旺盛で元気いっぱい。

点滴用の中心静脈カテーテル手術を行いました。

中心静脈カテーテル
鎖骨、首や胸、足の付け根などから、上大静脈あるいは下大静脈に留置する点滴用の細いプラスチックの管のことです。高カロリーの点滴を行う場合、通常の点滴では投与困難な薬剤を用いる場合(持続的な抗がん剤投与や、血管痛を伴う薬剤)通常の点滴ルートを確保することが困難な場合、血液を体外循環させる必要がある場合(血液透析など)などに使用されます。肘(ひじ)から挿入するタイプの中心静脈カテーテルもあり。

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★母である私が遺伝の保因者…
心の中で何度も『ごめんね』と謝り胸が痛くて辛かった…

移植前処置
抗ガン剤投与計6回

移植当日
放射線治療
点滴より臍帯血移植

★どうか拒絶反応がおこりませんよう…
細胞さん仲良くしてあげて下さいね。
心から祈るばかり…

○移植片対宿主病(GVHD)
生着したドナーの細胞が患者さんの身体を攻撃する疾患です。移植後数週間から3ヶ月頃までに起こりやすい急性GVHDと、移植後3ヶ月以降に起こりやすい慢性GVHDとがあり、それぞれ特有の症状があります。

急性GVHD
皮膚:身体の一部から全身に発疹がでます。重症化すると水疱や火傷のような状態になることもあります。
消化管:下痢、腹痛、吐き気などがでて、重症化すると大量の下痢や下血が起きることもあります。
肝臓:検査値のみの異常で無症状のことが多いですが、重症化すると黄疸を生じ、時に肝不全に至ることもあります。
『生着症候群』ドナー細胞が生着する前後の時期に(発熱、皮疹、下痢、肝障害、肺炎などの全身的な炎症症状をきたします。重症の場合は命に関わることがあります。

慢性GVHD
全身のさまざまな臓器が障害されるのが特徴的で、ドライアイ、口内炎、唾液の減少による口腔内の乾燥、皮疹、肺炎、関節/筋拘縮、肝障害、下痢などが起こります。慢性GVHDも重症化する場合には命に関わることがあります。また、長期にわたり改善せずに免疫抑制剤の投与が続く場合もあります。



★抗ガン剤、放射線治療により40度を超える高熱、おう吐
肝機能数値低下
血小板低下
赤血球低下により成分輸血(赤血球製剤)
白血球低下によりグラン投与。
(好中球を増やし機能を亢進させる作用を持ち、好中球減少症を改善させる)
抗生剤投与
免疫抑製剤投与
その他必要に応じての薬剤投与。

今までの例で比較すると使用した薬の種類は僅かだと看護師さんが話していました。
低下していた数値は徐々に回復。

そして無事に生着。
細胞の入れ替りはゆっくりのようで、定期的に免疫抑製剤投与。

無理のないように少しずつ慣らしながら外へお散歩。
満面の笑みで嬉しそう。
暖かい春の日差しが心地よい季節になり、いよいよ退院の日が決まりました。
退院の当日、息子を抱っこしながら病室を出ると、主治医の先生や研修医の先生達、看護師さん達が花道を作ってくれていました。
ずっと堪えていた涙が溢れ感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。

小学校に入学する頃には、免疫の値(IgG)も落ち着き元気に成長。
来年高校生になります。
将来の夢は消防士。

命を助ける為に沢山の方が懸命に動いている。
息子の難病に関わった全ての方へ改めて感謝致します。

指定難病一覧
https://drive.google.com/file/d/1xnvhas9H4lH-86fdhNohFOsQ2QQs3aWw/view?usp=drivesdk